組織スタディーズ

 「住民自身が自分の地域の将来を構想しながら担う」コミュニティ自治を提言してきました 「新たな意識に基づいた、新時代の組織」論を追求しています。これまでの「地域社会と自治体組織」研究からさらに進展してきています。
 特に「人の潜在力と呼応した組織イノベーション」が、いかに可能か。理論と調査で新たな「実践に向けての理論化」を進めています。
 自治体の組織研究、地域自治組織の研究が、特に組織イノベーションという点で、実は企業の組織論と極めて共通の基盤を持つことが理解されてまいりました。心が開かれた職場と、重苦しい職場、どちらが生産性が上がるでしょうか。そのことが、規律(人事労務や人事評価)、自生的構造(職場の信頼関係など)、そして生産性が連動していることが近年明瞭に示されるようになりました。
「人の潜在力と呼応した組織イノベーション」。これをみなさんとともに研究し推し進めたく思っています。
。地域の姿は誰がつくりあげるのか? 市役所? 本来、そこに暮らす住民自身が地域の姿をつくり支えることを第一と考えます。
 そのために、住民が文字通り「主体」となって地域を形作り、あるいは地域を運営することが問われます。Maeyama-Laboは、科研費にもとづいた研究を土台としつつ、住民自身が地域一丸となる「まちづくり協議会」の設置や、住民自身による公式の将来構想「コミュニティ計画」を全国の市町村で地域住民の方々、行政の担当課とともに立ち上げを推進してきました(テキスト:『コミュニティ自治の理論と実践』東京法令)。
 さらに21世紀の今、住民評議会が小自治体を経営する方式(米国の特別目的政府)など、自治体のあらたな生かし方も模索され、コミュニティ自治の新たな段階の可能性が模索されています。Maeyama-Laboは住民、自治体職員、NPOの方々とともに、さらなる研究に取り組み、支援いたします。

☆組織理論 ~組織とヒトに対するとらえ方の転換

 経営学における人的資源論(HRM)にあっては、人はコト・モノと同じくヒト財ですが、どうも「生きた人が元気になることで、それにつながる生きた組織が活性化する」という側面があり、哲学の転換が起きています。(「財としてのヒトと機関としての組織」から「生きた人とそれを生かす器としての組織」。かつて、経営学が生まれたときに、心理学、社会学、経営学が一体になって追求したことが、新たにさらなる深みをもって立ち現れていると感じています。(また、このことは、「絆の海の制度化」の根源的問題意識を持つ当Laboとして大きな意味を持っているとかんじております。)
 たとえば、当Laboの調査研究によれば、つぎのような事例が数多く、そして共通した形で見受けられます。ユニフォーム製造会社(株)桑和という中小会社のお話ですが、かつて社長は先端の経営論を学び、厳しくトップダウンでの経営管理をすすめていたところが、次第に組織の雰囲気が重くなり、問題が起こると「犯人捜し」が始まるようになり、経営が行き詰まってしまうところまで行ってしまいました。破綻がそこまで見えてしまったことから、社長(藤井様)にとって、経営も人生も真っ暗となり、「何が悪かったのか」を反問する日々が続きました。
苦しい中で社員に心を割って話し合うなかで、これまでの経営で人を生かしてこなかったこと(「社員を押さえつけ、かつ実は恐れていた」)での自分自身の姿勢に改めて衝撃を受けることとなりました。そこで、社長トップダウンをやめて課長以上からあらたに「経営会議」を開催し、また「共同体企業」を社是としました。その結果、次第に社員の意欲と士気が向上し、犯人捜しはなくなり、赤字解消、さらにV字回復することとなりました。
このことは単に「社長が変われば経営がかわる」といったものではなく、自生的構造(社員の職場の信頼関係と人生での展望)と、成文構造(規律や指令系統)とが、両方連動して好転するにいたったということであり、それにはいくつかのポイントがあります。理論として、再生された自生成文構造論(レスリスバーガー)を踏まえて検討しています。
この点に21世紀、ポストコロナの新次元の組織の可能性がある考え、みなさんとともに追求し、推進してまいりたく思います。

<参考論文>
・前山総一郎「ヒューマンリレーション論(人間関係論)の組織分析フレームワークとしての現代適用可能性:組織スタディーズの観点からメイヨー&レスリスバーガーの所論を基に」『都市経営』12号(2020年)(ダウンロード)http://dx.doi.org/10.15096/UrbanManagement.1206

☆自治体の組織論  ~日米の自治体組織の研究

 自治体の組織論にも携わってまいりました。米国のトップダウン方式からボトムアップ方式へ転換してきている米国の市自治体の研究。さらに、あたかも公団規模での、低所得者のための公共住宅を担当するハウジングオーソリティや、歴史観光市場の維持管理をおこなう小自治体(特定の特別目的のみに従事する「特別目的自治体」)の、地域住民からなる評議会のガバナンス体制などを探求してきました。
 21世紀・ポストコロナの時代、どのような自治体の組織のありかたが求められるのか。自治体が、市民ガバナンスの意向で動き、そして市民サービスのために組織イノベーションをおこなう・・21世紀・ポストコロナにあっての、日本の自治体にとってもとても大きな示唆と捉えています。
 この知見は、現実の自治体サポートにも生かさせていただいています。自治体職員が10年間、計画的に削減されてきて一人ひとりの職員の仕事が増えている今、統制での従来のやり方ではもはや職員の力は出ない・・・そのようなときに、内発的に職員の一人ひとりの潜在力を出して活性化するにはどのようにしたらよいのか。自治体の「行政経営改革」の推進に力を注いできております。

<参考文献>
・前山総一郎「米国のPDAと日本の先端的PPPとの制度基盤比較 : 紫波町オガールプロジェクトをベンチマークとして」『都市経営』1号(2012年)(ダウンロード) http://dx.doi.org/10.15096/UrbanManagement.0103
・前山総一郎「準自治体Public Development Authority(PDA)の原点と新展開」『都市経営』第2号(2013)(ダウンロード)http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/fcu/metadata/11975
・前山総一郎『米国地域社会の特別目的下位自治体』(東信堂)(再掲)

☆企業組織の組織イノベーション研究

 正社員として採用されても、新規学卒者の3年以内の離職率「七五三」(中卒67.7%,高卒40.8%,大卒32.2%のデータ)。これまで、離職に関わることとして、賃金,年次休暇の取得,メンタルヘルス対策という外的な要因が主として捉えられてきましたが、近年どうも、将来性・職場・人間関係・仕事内容に対するとらえ方や、ストレスコントロール力、また「主体性」についての当人と周囲のとらえ方ギャップなどの、いわゆる「ネガティブギャップ」という内的要因が大きいことがわかってまいりました。
 これまでノルマ型や統制管理型などの従来型の管理では、人事管理が難しくなってきています。人材難、コロナ禍で経営苦境にある今、どうしたらよいのだろうか。他方で、非正規雇用をせず正社員だけで家族のようにすすめて、内発力をためて経営改善にむけている企業も出てきている。それらに、共通しているのは、「終身雇用」「人材育成(共育ち)」「経営ビジョンの実質共有」であることが見えてきている(ビジョン経営に基づく終身雇用と人材育成)。この点、先にのべた自生成文構造論からとらえ、推進することができるとみています。
 この点を、実践企業、中小企業家同友会、また中小企業庁の方とともに探求しています。

<参考文献>
・前山総一郎「米国のPDAと日本の先端的PPPとの制度基盤比較 : 紫波町オガールプロジェクトをベンチマークとして」『都市経営』1号(2012年)(ダウンロード) http://dx.doi.org/10.15096/UrbanManagement.0103
・前山総一郎「準自治体Public Development Authority(PDA)の原点と新展開」『都市経営』第2号(2013)(ダウンロード)http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/fcu/metadata/11975
・前山総一郎『米国地域社会の特別目的下位自治体』(東信堂)(再掲)

公開講座(福山市立大学教育研究交流センター)「コロナ禍・人材難・はたらき改革で苦悩する企業・NPO組織の光転の新動向研究」(前山Labo 主宰)
(第48回中小企業問題全国研究集会in兵庫(第8分科会「第8分科会「ビジョン経営に基づく終身雇用と人材育成」での討議シーン)