「新たな福祉社会」・連携に基づく強靭な地域社会がどのように展望できるか!? にむけて  ーコミュニティ政策学会の国際交流委員会の研究会の立ち上げを通じてー

コミュニティ政策学会 国際交流委員会の研究会の立ち上げ

 コミュニティ政策学会の国際交流委員会での研究会を立ち上げさせていただきました。その立ち上げとアウトリーチのお話をさせていただきたく思います。

 昨年、新たな委員会刷新の必要がでてきたのですが、私、前山が同学会の国際交流委員会の委員長を拝命することとなりました。 

 そこで、たんなる国際交流ではなくて研究に基づいて発信できるもの、また、大きく変貌している現代の社会のありかたを、国際比較を基に展望し提言できるもの、という趣旨で新たな動きを作りたいと考えることとなりました。 

コロナ下で地域社会が分断さればらばらになるなかで社会全体が安定感・幸福度を失う

  お世話になっている米国のワシントン大学。その看護・ヘルスケアリーダーシップ学部学の学部長のシャーロン・フォートさんと懇意にさせていただいていますが、フォートさんとやり取りをする中で、米国ではとりわけ「分断」が進んでいる。そのしわ寄せは、大変に厳しい形で低所得者の方々に打撃となっている、とされます。学部では、教授たち、研究者たちが現地のシアトル-タコマのエリアに繰り出して、特にコロナ禍下で懸命に調査にとりくんでいるのだけれども、見えてきたこととして、失業の増加、低所得者になるほど健康医療情報へのアクセスが困難になっていること、ホームレスになる人の続出、地域での拒絶感 といった不調和が増えているとされます。

 私自身も、それにも刺激を得て、コロナ下でシアトル-タコマエリアでのホームレスの急増に対して、自治体(群政府、タコマ市自治体)が緊急的に対応したこと、そしてとりわけネイバーフッドカウンシル(まちづくり協議会)、ハウジングオーソリティ、NPOまた教会が避難所の提供をおこなうサービスなどで懸命にコミットしつつも、住民からの理解が得られなかったり、多くのホームレスの方々自身が社会から切り離される失望にさらされたりと、対応に苦慮してきたことをお示ししてきました(前山2002 ←下記参考文献)。

 しばしば述べられることですが、大金持ちでも社会的に分断がすすむ社会では幸福度は低い(逆にそれほど大金持ちでなくても、分断が少ない開かれた社会だと幸福度は高い)ということがあります。このことは次のことにもつながります。絆の社会的な宝(社会関係資本)が豊かな地域コミュニティほど犯罪と暴力にさらされるリスクは少なく、安定している。逆に言うと、分断され、社会的排除がつよい地域コミュニティほど、犯罪や暴力のリスクが多く、安定しない地域コミュニティ社会となるという指摘があります。(例えば、稲垣 2001年←下記参考文献) 。

図 タコマ市におけるホームレスの方々のテント(タコマハウジングオーソリティの前の公園)

(典拠)Tacoma Housing Authority, Annual Report 2021: https://www.tacomahousing.net/sites/default/files/2021_annual_report_2021-1-11.pdf

社会的変動の今、どのようにこれからの社会を展望したらよいのか

 コロナ禍での各種の生活・組織の変化に私たち翻弄されています。また、世界の政界財界とともに世界経済フォーラムを立ち上げたクラウス・シュワブ(2016年)のいう、デジタル・生産流通の「第4次産業革命」の大トレンド、そしてそこで現れている新たな社会的排除といった構造的変化といった巨大な変動のうねりの中に私たちはおかれている、ないしは放り込まれ、場合によっては漂流している。そのうねりをどのように捉えたらよいのだろうか。このような問題意識を持ってきました。 

 

 そこで、少し時間をかけて、機会ごとにこのお話をもってお声がけをする中で、熊本学園大学の仁科伸子さん、神奈川県政策研究センターの加藤壮一郎さんが賛同してくださり、そして今後の社会の在り方を展望できるようなものを考える場をつくるために、新たな形で立ち上げよう!ということとなりました。 

仁科さんは、仁科さんはロンドンや、シカゴ大学で学ばれた地域福祉学のスペシャリスト。加藤さんはヨーロッパ、デンマーク政府奨学金給付生としてデンマークの大学で研究調査をすすめてこられた碩学。うってつけの方々のお力を頂いたと感謝とともに感じています。 

この今後の社会の転換をめざす仲間たちと、何回もコンセプトを話し合い、だんだんに形になってまいりました。 

「ローカル」に立脚して、そこから社会の調和ある地域社会づくり(社会統合)を展望しよう  -居住・労働の在り方を通じて

するなかで、次のようなことが浮かび上がってきました。 社会的排除や社会的包摂(社会インクルージョン)というものがハウジングや労働政策でどのようになされてきているのか。 思想環境や世界観・絆観などが、時代状況や制度でどのようになってきていて、その先、どのようなものとなるのか。 かつ、それを、国家的政策のみならず、地域での政策実施レベルからとらえてゆこう、というものです。 

 すこしブッキッシュに言うと、まず、ひとり一人が、通常利用できるさまざまな権利、機会、資源]から個人が遮断されたり隔絶されることがないことが大切なこととしてあります。これはしばしば社会的排除(social exclusion)といわれる言葉で、具体的には、住宅、雇用、医療、市民参加、民主主義への参加から疎外されてしまうことで、上記のタコマのホームレスの方々の苦悩を想わざるを得ません。そして、次に、さまざまの人たち、グループ、老若男女、国籍や文化にかかわらず、上のような社会的排除や分断が修復されて・超えて、共存、協調、結束の調和のある地域社会のありかたになること(社会統合:social integrationという言葉で言われます)が、今まさに大切な時と思われます。日本では、コロナ禍の影響をもろに受けて、非正規雇用の女性の失業・再就職の断念や、全世帯数の11%を超える独居高齢者の方の孤立といったことが、いわば表面には現れづらい形で進行しているともいわれます。これらのことは、地域社会で人々が住む居住、はたらきにつく「労働・雇用」、また「社会保障」ということで直接にあらわれることであり、そして、それは、政府レベルの政策も大切ですが、とくに地域社会レベルでの、ローカルな視点からの各セクター一丸での対応がものすごく大切になっていると考えます。

 以上のことを考えたり、話し合いながら、具体的には、 メンバーの顔を見合わせながら、つぎのことを柱としながら始めてみませんか、ということとなりました。

国際比較による変動社会における福祉社会統合の展望 (暫定的柱

アメリカ、ヨーロッパ研究をしている者が多いことから、このように設定しておりますが、今後アジアや世界の他のエリアを研究している方にぜひコミットしていただきたいとさらに考えております。 また、関心のある方は、どうぞお声がけいただければとても嬉しいところです(⇂ に連絡先)

 最後に、コミュニティ政策学会の国際交流委員会は、第1回研究会の開催をもって実際に動き出すこととなったのですが、その第1回の研究会のお呼び掛け文をご共有させていただきます。今後の日本の社会にむけての実践と研究がよい方向にむかう一助になればと願うような気持ちでおります。

 あ、また、余計なことを申してしまいました(笑)。

まずは、ご共有させていた枝きました。引き続き、別のページで、第1回の研究会でのアウトリーチの内容をご報告させていただきます。

【参考文献】(アルファベット順)

・稲葉陽二『ソーシャルキャピタル入門 孤立から絆へ』中公新書、2011年

・加藤壮一郎(共著)『福祉国家の転換 連携する労働と福祉』旬報社, 2020年 

・前山総一郎「サービス供給・公共的決定の地平とローカルガバナンスにおけるネイバーフッドカウンシル :コロナ状況下でのホームレス問題への対処とサービス供給をめぐる 米国タコマ市(ワシントン州)の調査に基づき」『都市経営』第13号、2021年

 ・仁科伸子『包括的コミュニティ開発 -現代アメリカにおけるコミュニティ・アプローチ』ミネルヴァ書房, 2013年 

・クラウス・シュワブ『第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来』日本経済新聞出版社、2016年