公開講座「コロナ禍・人材難・働き方改革で苦悩する企業・NPO組織の好転の新動向」を開催しました。(1)

「コロナ禍・人材難・働き方改革で苦悩する企業・NPO組織の好転の新動向」を見つめる公開講座

 

 

「働く人を根源的に生かす組織とは?」の想いからの組織構造の研究

 苦しいコロナ禍のなかで、人と組織を温め、イノベーションし、成果をあげるにはどのようにしたらよいのか? 地域における組織と人に元気になっていただくにはどのようなことがあるのだろうか? 仲間たちとこの点を討議してまいりました。この数年、特に特に組織社会学や組織スタディーズの領域で、組織と意識の相互作用のありかた!というものに着目した新しい理論が現れたことなどから、Maeyama-Laboは、組織論研究に力を入れる機会を頂いてきております。特に、働く人を根源的に生かすものはどのようなことか?という観点から、組織の人的基盤と指令・規律の構造との関わりに着目してきています。

「コロナ禍・人材難・働き方改革で苦悩する企業・NPO組織の好転の新動向」を見つめる公開講座

 勤めている福山市立大学の公開講座では、Web公開講座として開催させていただくこととしました。Maeyama-Laboが主宰させていただき「コロナ禍・人材難・働き方改革で苦悩する企業・NPO組織の好転の新動向 -組織スタディーズの好転の新動向から」というタイトルで講座を開催いたしました。メイン講師として、株式会社タテイシ広美社 代表取締役会長の立石克昭(たていしかつあき)様、第一助言者として中小企業庁事業環境部調査室調査員の尾高正裕(おだかまさひろ)様にご発議をいただきました。Maeyama-Labo(前山総一郎)も、企画者兼助言者として発言させていただきました。

 ここで、ブログのパートを分けて、そのお話の素晴らしい点をお伝えしたく思います。

公開講座の案内文
(左から、福山市立大学山中先生、前山、尾高様(画面)、立石様、本学総務課加藤次長)

「社員の方も顧客も、そして地域もよくなり、ひいては会社(組織)の発展につながる道がある」の感慨! ~タテイシ広美社 取締役会長 立石克昭様

 今回のブログでは、メイン講師をお引き受けくださった立石克昭(たていしかつあき)様(株式会社タテイシ広美社 代表取締役会長)のお話を、勝手な解説を加えさせていただきつつ、お伝えしたく思います。立石様には大きな感動と刺激を、参加者、私を含めた登壇者が頂くこととなり、大変に熱気のある場、また希望を感じさせていただく場となりました。

 オンラインで参加くださったある経営者の方は、聴講後の感想文として、「先日はオンライン講座、拝聴させていただきました。誰が聞いてもなるほどと思える、貴重な体験談だと思いました。そして、立石会長のように、自利ではなく利他の実践をしていくことがやはり社員の方も顧客も、そして地域もよくなり、ひいては会社の発展につながるのだと思います。」というお言葉をいただきましたが、多くの方にそのような「社員の方も顧客も、そして地域もよくなり、ひいては会社(組織)の発展につながる」道があると感じさせる希望の好転の事例を大変に力強い講演のお話を立石様から頂きました。

(熱くお話下さる立石克昭様(左):なお、前山(右)との間に製品のアクリル板が設置されている。)

「厳しい時代状況でピンチをチャンスに変えた企業経営の組織内絆づくりとは」

 立石様には、「厳しい時代状況でピンチをチャンスに変えた企業経営の組織内絆づくりとは」というタイトルでお話をいただきました。今回とても印象的だったのは、2020の東京オリンピック関連の仕事(会場の看板)を受注をうけていたけれども、コロナの影響でのオリンピック延期により大変な売り上げ減となってしまったとのことでした。多くの企業、中小企業が打撃を受け、苦しんでいる今、聞いているだけでもハラハラしました。ところが、そのさなかに、コロナ対策製品を開発、製作販売で大きく売り上げを伸ばされたとのことです。社員のかたから「会長、うちでサインボードの一部として扱っているアクリル板が、コロナウイルス飛沫防止の製品として役に立つのではないですか!」と提案してくれたそうです。3月中に急いで、製品化してカタログを作ったり、インターネットやSNSで広報をはじめられました。そうしたところ、医師の方々などがこれを聞きつけていただいたことがあり、その後大変な受注となりました。売上もそれにより回復されるに至ったとのことでした。

 お話を伺うと、これはたまたまではなく、立石様の経営者としての歩み、またそれにより組織を柔軟にされてきたこと、内発的な力が発揮される土壌をつくられたことが大きいと強く受け止めさせていただきました。

(同社ホームページ : https://t-kobisha.co.jp/ )
(同社 外観)

経営者の苦悩と深化

 学生時代より経営者の目標を持ち24歳で創業された立石様。実は、そのときには意に反して従業員がどんどんやめていったとのことです。その折には、「いかに売り上げを上げるか」「いかに人件費を削るか」「いかに税金を払わないか」にのみ、つまり「稼ぐことだけ」を考えていたとのことでした。自分中心のやりかたで、まるで「立石労働基準法」であった、とのことでした。けれども、ある税理士さんとの出会いやセミナーとの出会いによって、自分の経営の姿を考えさせられることがあり、「経営の仕事は、従業員に夢を与えることだ」という考えにふれて衝撃をうけたとのことでした。そこから自分の経営について、社員の方々との関わり、組織についての考えが変わってこられることとなりました。

 今、立石様がモットーにしておられることとして、次の三点を挙げて頂いています。

  • 経営哲学は仕事を楽しむことは、人生を楽しむことである。
  • 社員(社長も社の一員)の幸せが会社の目的。
  • どの時代も状況は変わらない。その時代のハードルをチャンスに変える。

 

 素晴らしいことばです。この手のことは、実は多くの企業で標語として掲げられることが多く、社員の方が得心されていない場合も多いと見受けられます。それに対して、タテイシ広美社では、これが経営の組織基盤および組織風土といった現実に強く連動していると感じます。

(高輪ゲートウェイに設置した、先端技術での同社サイネージ)
(同社に展示されている、各種の看板とサイネージ)

「社員の幸せ」を想い・「社員に頼る」ことで成長

 この考えに立たれたことから、それを経営の組織基盤の柔軟化・活性化に生かされてきています。立石様は「社員に頼ることで歩んできた」とされます。特に、同社の経営危機のときに、「社員の幸せ」を想い・「社員に頼る」ことでピンチをチャンスに変えて大きな飛躍(脱皮)をされてこられました。1980年後半にパソコンが普及し、多くの産業に浸透した時期でした。ペンキ塗りを主体とした看板業としての業態にあってもそのような変動が降ってきた時期です。同社では、1986年パソコンの普及により看板の手書きからカッティングシートの時代に変わり、それまでの看板にかかわる仕事や技術が売れなくなりました。小さな中小企業。パソコン自体よくわからないし、カッティングのプログラムなどちんぷんかんぷん。そのときに、その窮状を社員の方々と話し合ったとき、若い女性の社員の方が「テキストを買わせてください。私が、勉強して、パソコンとカッティングシートのプログラムを作り上げる勉強をして、作り上げるお手伝いをします。社長(当時)!やりましょう!!」と言われたそうです。これは、トップダウンのやり方で、「立石労働基準法」の考えで社員を思うように働かせようとしていた状態だったら起こらなかったことでした。実は、その後も、1991年バブルの崩壊でピンチになる第二の危機がありましたが、社員と検討しながら、「LED電光掲示板」の自社開発をし新たな事業領域を確立されました。LED電光掲示板という新たな技術にチャレンジされつつ、大企業では対応できない、個別生産への対応によって活路を見出されたとのことです。1986年のパソコン技術・カッティングシート技術への進展、1991年バブルの崩壊ピンチでのLED電光掲示板自社開発への転換という危機にあって、それぞれのタイミングで、社員の方々に対する圧倒的な信頼をかけられて、また社員の方々との意識共有とやる気を引き出すことが起こることにより、うまくボトムアップがはかられながらタテイシ広美社の前進と組織拡大と業績を延ばされてこられたことがとても印象的です。

「経営者の姿勢- 組織風土- 指令系統と規律」の三者が連動しての好転

 経営者の姿勢とまなざしの転換があり、そしてそれと連動しての組織基盤と風土の柔軟化が進みました。でも、それを進められたのは、単に経営者(立石様)の想いの転換があったという単純なことではないようです。「経営者の姿勢(眼差し)- 組織風土(社員のいきいき)- 指令系統と規律」の三者が、連動して大きく転換してこられました。それを象徴しているのが、社員が作成に関わって作り上げられている『TATEISHI 経営指針』です。経営理念や経営方針とともに、各部署手作りの年度品質目標、さらには社員の方それぞれの部署への到達目標と個人の未来目標までが記されているものを毎期、社員総出でつくっておられます。皆で方向性を確認し、そして皆で自分の力を生かす形で,各部署と全体のビジョンを定めてゆく・・・これを作り上げるのにやはり相当の努力と年月をおかけになったとのことです。立石様の実践の重みを感じさせていただきました。

 

 このお話を象徴する次の絵をご紹介させてください。

 この絵は、立石様ご自身の筆になる絵です。「いこるところに人は集まる。」と書いてあります。炭に火がおこることを、広島(備後地方)の言葉で「いこる」と言います。立石様は、自分たちが炭だとして、そこに暖かい火がほこほこと「いこる」(おこる)と、よい情報、よい仕事、よい人と出会いがあつまってくる・・・。人・組織を暖め・好転させるとても象徴的な、素敵な言葉ですね。苦難を経ながら、社員を徹頭徹尾大事にされて好転を起こされ続けてきた立石様ならではの重みと温かみのある言葉です。「いこる」・・今回のブログのお話をひとことで表すような言葉でもあります。

 

 さらに、立石様は、現在、会社をはみ出して、本社がある府中の市立のコミュニティスクールの地域協働事業を、会長として推進されておられます。企業が進化すると地域社会・地域組織への眼差しも変わると感じています。立石様は、また、「真の働き方改革は単なる時間短縮ではなく、やりがいのある多様な働き方を実現すること」ともされておられます。さて、少し盛沢山ですね。これらのお話についてはまた別の機会に譲りたいと思います。

 

次回は、中小企業庁事業環境部調査室調査員の尾高正裕(おだかまさひろ)様による、実はコロナ以前から起き始めている産業・経営構造の変質と中小企業組織をめぐるリアルで透徹した眼差しについてお話させていただきたく思います。

 

まずは今日はこれまで! (See you by now!)