コミュニティ政策学会中国ブロック 第1回研究会

「コミュニティ政策学会中国ブロック 第1回研究会」開催のご報告

うれしい展開がありましたので、ご報告かたがたご共有させていただきたく思います。(今回は、研究会の立ち上げについてご報告させて頂きますが、ご関心のある方は是非ご連絡いただければと思います。→ info@maeyama-labo.com)

 私が常任理事を務めさせて頂いているコミュニティ政策学会で、私自身、いくつかのプロジェクトをすすめておりますが、そのなかの一つのお話し。

 さる2021年の2月18日に、同学会の中国ブロック研究会が立ち上がることとなり、その第1回目が開催されました。数年来の大会実施とかかわる大きな流れの中でのお話ですので、私自身大きな感慨を頂いた時でもあります。

 さて、この考え方の基本は、「コミュニティ」から社会の在り方を実践の視点からとらえてゆく!ということに力点を置いていると考えます。研究者、NPOの方、自治体職員の方々、大学院生の方々、また、領域としても自治体組織論、地域福祉、非営利組織、地域自治組織、都市工学と様々な方がおられ、よい学際的-interdisciplinaryな関わりがあります。そして、さらに「コミュニティ」・・共属感をもって共に暮らす最基層の近隣社会という、社会学の言う近隣社会の意味でのコミュニティ、ないしは社会的紐帯の束(social community)としてのコミュニティ・・その実際の在り方への密着、その変容の姿への眼差しを基底においている、ということがこの研究会の大きな特徴と考えています。そして、理論とともに、仲間では、安藤周治理事長(特定非営利活動法人ひろしまね理事長)のように、総務省にも影響を与えてきた、地域自治組織の推進者・デザイナーが控えてくれていて、あるべきコミュニティというもののありかたと展開についての「実践」にむけて、大きな刺激をいただいています。「コミュニティ・ベース」「理論と実践」・・この研究会(風呂敷を広げるとコミュニティ政策学会自体)がそうした、得難い足がかりを持っていると言えるのではと思います。このことは、コロナ禍で社会の構造が変動してゆくことが予測されている今、今後の社会基盤の構築ないしは再編成にむけて、眼差し、実践として、とても活かされものを持ている、提起できるという予感と希望を感じています。

第1回研究会ご案内

当日の様子

 コロナ禍のなか、オンライン(zoom)で10名の方々が集まっていただきました。後に触れる第17回大会で仲良くなった仲間たち、また新たに関心を寄せていただいた行政マンの方、NPOの方、大学院生の方々などがご参加くださいました。(この日のこと、私自身が報告者でゆとりがなく、写真を撮ること失念し、失敗していました。)

 すでにお互いにお知り合いの方も、初めての方も、オンラインながら、自己紹介かたがた問題関心などを共有いただきました。コロナ禍で衰退する地域や商店街をなんとかしたい。自治体の今後の可能性を探りたいと来ました、と前向きなお気持ちでみなさん集われました。

 手島洋先生(県立広島大学)、安藤周治さん(ひろしまねNPO代表)、中村隆行先生(広島経済大学 & ひろしまNPO代表)、池田憲太郎(笠岡市自治体)、金谷信子先生(広島市立大学)という既知の方々と共に、新しい方々がご参加くださいました。当日は、真剣でかつ希望を感じさせる明るい場となりました。コロナ禍でもとてもよい場ができたと感じたときでした。

お話の内容

 今回は、たまたま、大会の担当をしたことから前山が第1回目に報告することとなりました。また、おなじく理事の、広島市立大学の金谷先生にご報告いただきました。述べた通り、「コミュニティ・ベースで地域のダイナミクスをつかむ」ということですが、たまたま今回は、二人の報告者とも米国でのコミュニティ政策での報告ということとなりました。(次回は、足元の日本でのこと、また中国地方での展開についてのご報告も予定しています。)  

 具体的には次の報告となりました:

第一報告 前山総一郎(福山市立大学)

「米国の特別目的自治体『ハウジングオーソリティ』の組織改革と地域ヒューマンサービスの社会的意味 ~低所得者コミュニティにむけての自治体の新たなかかわり~」

第二報告 金谷信子先生(広島市立大学)

「公共サービスの市場化と市民社会・コミュニティ」

自治体の組織イノベーションによる低所得者コミュニティへのサービス改革

 前山は、過日刊行した書物(※)でお示しした「特別目的自治体」(special purpose government)の体系とその特性に関連して、その一部としての「ハウジングオーソリティ」というものについて報告させていただきました。米国特有の単一目的の小自治体にあって、、低所得者コミュニティにむけた地域ヒューマンサービスのために、自律的な組織イノベーションを1990年代後半から2000年第前半に起こったことを報告いたしました。

  (※前山総一郎『米国地域社会の特別目的下位自治体』東信堂、2000年

→なお、ブログの今後の回で改めて、日本でほとんど知られていない特別目的自治体について、解説させていただければと思っています。)

報告パワーポイントの一部

ネオリベラル市場における非営利組織のありかたの今とこれから!  ~「経営とサービス」の分析から

 金谷先生のご報告は、現状にあって、介護保険市場における市民社会(NPO法人)の強み、弱みを明らかにする、という意欲的なものです。「介護サービス情報公表システム」のデータを駆使されて、〇収入規模、〇生産効率性、〇サービスの質、の特性を示されて、「介護保険サービス市場において、NPO法人事業者は、収入確保・拡大や生産効率の面では、営利法人より劣位にある」が、他方で「サービスの質」の点では(資格・経験・運営評価・退職率)、営利法人より高い、という点がとても印象的でした。

 さらに精査が必要とのことではありましたが、非営利法人、とりわけNPO法人事業にあって、退職率や運営評価の点でそこで「働く『人』」、また「利用する『人』」に「非営利」ならではのサービスの好転の循環があるのではないかと希望をかんじさせてもらえるご報告でした。市場原理主義に突入した福祉市場においてNPOをはじめとする非営利はどのような戦略で新たな時代社会に切り結んでゆくのか! 本当によい視座の研究で、今後すごく楽しみです。

余計なことも

 なお、余計なことですが、私にとって、びっくりしたことがあります。やり取りの中で、金谷先生がかつてワシントン州の政府で研修されて、その時に“NPO”に出会われたこと、またその後阪神・淡路大震災の支援の中で多くのNPO関係者の方々と出会ったことから研究を志し今日に至られたとのことを伺いました。私がワシントン大学の客員研究員、また連携教授をしてシアトル-タコマ エリアをベースに研究をしてきただけに、シアトル-タコマ エリアでの社会的組織について同じことを触れて捉えていたことにびっくりもしました。

次回につづきます

 さて、実は、このコミュニティ政策学会 中国ブロックの第一回研究会が現成するには、大変なドラマが数年がかりであったのです。私自身の歩みにとっても大きなインパクトがあったほどのものでもあります。次回、その点を少し述べたく思います。

では、今回はこのあたりで!

  Omnes, vale nunc! 

(↑ラテン語で「皆さん、まずはこれまで」(笑))